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プロセスマイニングの落とし穴

緊急事態宣言も解除され、コロナ禍も落ち着きを見せてきたかのように思える昨今
企業や、そこで働く人々のあり方には大きな変化が求められている。
働き方改革、DX、ニューノーマル…呼び名は様々に推移してきたが
この移り変わりの中で今注目を集めているのが「プロセスマイニング(ツール)」だ。

《プロセスマイニングとは》

プロセスマイニングとは、企業において従業員が行うさまざまな業務活動のログを取得し、
業務プロセスを可視化する分析手法だ。
あらかじめ設定された通常の業務の流れから、
実際にどの程度乖離した業務の流れが発生しているのかを数値で確認できる。
この性質は業務改善のシーン等で非常に注目されており、
ヒアリングを主とした従来の業務調査(現状調査)と比べ、
従業員は日常業務をこなしながら、従業員に負荷を与えずに調査を実施出来ることは
業務改善活動において非常に大きなメリットといえるだろう。

欧米では2018年頃から、爆発的にプロセスマイニングツールの導入が進んでいる。
この背景には2015年頃からのRPAの流行があり、プロセスマイニングツールで業務の問題点を発見し、
RPAで解決するといった流れが主流となっている。
両者の親和性は非常に高い。

ところが2022年現在、日本ではRPAという単語を耳にする機会が減ってきたように感じる。
それはなぜだろうか…?

《RPAでは思った以上の効果が出なかった》

日本でのRPAは万能感のイメージが先行し、ユーザーに過度な期待を与えてしまった。
それこそ「RPAさえ使えば、全ての業務はロボットが自動で実施してくれる」といった
まるで魔法の杖のようなイメージを持たれていた。

ところが、日本企業では欧米企業と比べ(法制度を含め)「人員削減」に非常に大きな壁がある。
RPAがもたらした時間削減が、=人員削減とはならなかったのだ。
RPAのメンテナンスコストまで加味すると、期待したほどの費用対効果は出ず、
RPAがもたらすミスの削減といった効果は、定量的な評価を得られにくかった。

こうして、多くの日本企業がRPAに注目したものの「Aさんの○○作業だけロボット化できた」というような
POC的な部分最適の導入にとどまってしまった。

《プロセスマイニング(ツール)では?》

結論、プロセスマイニングでも同じことが起こりうるだろう。

まず前提として、そもそも「業務」に対する認識が違う。
一般的に欧米企業ではまず業務ありきで人がアサインされる。
これに対して、日本の企業は人ありきで業務をアサインする。
(新卒一括採用といった採用形式がこの最たる例だが…)
「手が空いていたら○○やっておいて」と業務を作って与えたり、
業務のやり方を変えたりすることが黙認されており、業務の定義が日々担当者レベルで変化してしいく。
このため、改善対象業務として選定したところで、なかでなにをやっているのか分からず、
PCログに残らないプロセスも抜け漏れてしまう。
プロセスマイニングの「あらかじめ設定された通常の業務の流れから、
実際にどの程度乖離した業務の流れが発生しているのかの調査」といった前提となる、
「通常の業務の流れ」が曖昧なのだ。

プロセスマイニングがA地点~B地点までが一番反復回数が多くなっている(ハッピーパス)と分析できたとしても、
その上流や下流でPC外の作業が発生している可能性が多いにあるわけだ。
このまま改善施策を検討しても、部分最適になることは想像に難くない。
仮にRPAを検討したとして、
受け取った書類を手入力、演算処理(A~B地点)はRPA、出来上がった書類をまた出力して、
承認の印鑑をついて別部署へ送り、受け取った先ではまたその書類を部門単独のシステムに手入力して…
待っているのは「思ったほどの効果は出なかった」の評価である。

《プロセスマイニングの未来》

プロセスマイニングが最大限の効果を発揮するために、以下の3つの要因が重要と考える。

・ペーパーレス
・業務の定義
・発見した課題の改善策(選択肢)

緊急事態宣言以降、多くの企業でテレワークが半強制的に導入されペーパーレス化が加速したことは、
プロセスマイニングにとって大きな追い風となるだろう。
またそう遠くない将来、コンサルタントの領域とされてきた改善策の検討について、
AIが改善策を提示するなんてことが出来るようになるかもしれない。
そのうえで、(特に日本企業においては)社内における共通の業務定義、
それも可能であれば職務分掌のようなザックリとしたものではなく業務一覧を作成し、
定期的なメンテナンスをもって刷新し続けることが出来れば、プロセスマイニングは非常に有用なものとなるだろう。

PECOROS

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