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歴史から学ぶデータビジュアライゼーションの意義

可視化の意義

現在よく使われている棒グラフや円グラフといったデータの可視化手法は、18世紀にウィリアム・プレイフェア氏によって発明されました。彼がロンドンで1786年に出版した「The Commercial and Political Arlas」という書籍の中で、下記の棒グラフ・折れ線グラフが初めて公に登場します。
棒グラフはスコットランドにおける他国との輸出入、折れ線グラフには貿易収支が示されています。


また、19世紀には”クリミアの天使”として有名なかのナイチンゲールが、クリミア戦争時の軍隊における死亡原因をまとめた鶏頭図というグラフを利用してレポートを発表しています。この図では、青を感染症による死亡、赤を外傷による死亡、黒をその他の原因による死亡として色分けし、その量を示しています。この図を見ることで、戦争における負傷そのものよりも感染症の死亡者数の方が圧倒的に多く、かつ看護環境・体制の整備によって死亡者数を減らせることを示唆したのです。

このようにデータビジュアライゼーションは、データに埋もれてしまっている事実を「より分かりやすい形で」「より多くの人に」理解してもらいやすくするための手法です。統計学のプロフェッショナルであれば、データそのものの羅列から示唆を取り出すことが出来るのかもしれません。しかし多くの人は異なります。なによりデータ分析がデータを読む人それぞれに依存する場合、それにかかる時間は膨大となり、読み取る内容や精度は人それぞれ異なる状態となります。業務改善の視点でいえば「ムダ」と「ムラ」の発生です。一方で、可視化されたグラフは、脳が数字の羅列から推測するのに数分かかる内容を即座に認識させることが可能です。可視化することによってこのムダ・ムラを取り除き、「同じデータから同じ結論を短期に導き出す」ことが可能になるのです。
営業におけるプレゼンテーションや社内での情報共有・報告、色々な場面において可視化のスキルは役立ちます。特にDXの推進、ビッグデータやAIの活用など、これまで以上に情報の「データ」としての取扱いが重要になりつつある昨今、データビジュアライゼーションはビジネスマンの必須スキルのひとつとして捉える必要がありそうです。

可視化の罠

しかしながら、前述した「同じデータから同じ結論を短期に導き出す」という可視化の性質には、注意すべき点があります。それは、見せ方によって印象を操作し、誤った結論に導くことが可能になる、という点です。

上のグラフを見比べてみましょう。
上の2つのグラフは、まったく同じデータを使って作成したグラフです。A~Eの5つの要素があり、それぞれの要素数はすべて同一です。しかし、印象としてはどうでしょうか?
右のグラフをみると、Cの要素が一番多いように感じます。3D化することによって、同じはずの表示面積が、手前が大きく、奥が小さく見えるように変じています。

また、折れ線グラフや棒グラフにおいては、目盛の軸を変化させることで、変化の幅を大きく見せたり小さく見せたりすることが可能になります。このように、同じデータを使って可視化しても、「見せ方」で印象を変えることが可能になるのです。
こうした手法は、近年テレビやSNSを見ている中でも散見されます。少数意見をあたかも「世間一般の声」と勘違いさせるような見せ方をされているケースがあります。先程データビジュアライゼーションはビジネスマンの必須スキル、と書きましたが、日常生活を送る上でも可視化された情報を「正しく読み取る」スキルは必要となってきているのかもしれません。

データを正確に伝える技術、読み取る技術

では、データビジュアライゼーションを行う、もしくは受け取る立場として、具体的にどのように可視化されたデータと向き合っていけば良いのでしょうか。

1)適切な表現手法を用いているか。
まずは、グラフを作成する場合に「どのグラフを使うか」という選択があります。グラフには、それぞれ表現する内容に適性があります。棒グラフは「データの大きさの比較」に適した形式であり、ヒストグラムは「データの分布」を表現するのに適しています。折れ線グラフは「トレンドの把握」や「予測」に用いられます。円グラフは割合の表現に適したチャートですが、人間の認知能力では「面積」よりも「長さ」の方が把握しやすいという特性もあり、積上グラフで代替することも可能です。
こうした特性を考慮してグラフを選択すること、また情報の受け取り手としては不適切なグラフが使われていないかをチェックすることが有効です。

2)データの母数は十分か
グラフの元となるデータ量、データ取得期間などは十分でしょうか。例えば顧客サービスの品質について「80%の人が満足している」というデータを提示された場合に、その80%の母数は何かを知る必要があります。「5人の消費者の内の80%」なのか、「500人の消費者の内の80%」なのか。データの母数が極端に少ない場合、そのデータの示唆する内容が「妥当」なのか「たまたま」なのか判断がつかなくなります。

3)データの定義は適切か
よくあるアンケートで、商品やサービス品質について「満足」「やや満足」「やや不満」「不満」といった選択肢を見かけることがあります。こうしたアンケートも、集計されてグラフとなり、誰かの意思決定に使われます。このアンケートの選択肢において、重要なのは各選択肢が「等間隔である」ということです。たとえば「満足」の項目だけ選択肢が多く設定されていたり、片方だけに「とても不満」などの強い表現がされていると、分析の際の点数化が不正確となり、データの正確性が損なわれます。また、「OL」と「主婦」などといった、抜け漏れ重複ありの項目や指標で作られたデータは、両方に属する人はどちらの数値に入っているのか、両方に属さない人の回答はどこに反映されるのか、などが不明瞭になります。このように、データの定義がきちんと明確になっていないグラフや表は、作り手としても受け手としても回避する必要があります。

アメリカの統計学者であり、データビジュアライゼーション分野のパイオニアと言われるエドワード・タフテ氏は、定量情報の視覚表示において、過度の装飾を排し、デザインではなく内容そのものに視聴者を誘導する必要性を述べています。例えば下の図、これはシャルル・ジョセフ・ミナードの描いた、1812年から1813年のロシア侵攻においてナポレオンの軍隊が被った損失を示す図です。この中には、軍隊のサイズと位置(x,y)、時間、移動方向、温度を示しています。6つの変数によって、どの地点が難所であったのか、ソースデータを示しながら軍隊サイズの変化の原因を示唆しています。タフテ氏は著書の中でこれを”It may well be the best statistical graphic ever drawn.” 最高の統計グラフィック、と評しています。

データビジュアライゼーションの目的は、「グラフィカルな手段で情報を明確かつ効果的に伝達すること」と言われます。デザインにどうしても目が行きがちになってしまうインフォグラフィックスの世界。しかしながらクラウド上でBIツールを使用できるなど、豊富な手段に身近に触れることが出来る現代だからこそ、データビジュアライゼーションのスキルを獲得するチャンスなのではないでしょうか。

K-Akiba

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